【読んで損なし!】天皇の爽やか、貴重な青春留学記、ベストセラー、『テムズとともに――英国の二年間』

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楽しく、わかりやすく、胸キュンの、皇太子英国留学記

ある日、長年の学校友だちが、本書を読んで
天皇陛下って、いい人よ~!
と。彼女は大変なインテリですが、
なに? その感想???
ちょっと迷った末に読みだしたら、
面白くて、もうとまらない! 
その後、再読を重ねるたびに、新しい発見があり。
出会ってつくづくよかったと思える“名著”の1冊に
なりました。 

拙い説明ですが、どうか、おつきあいください。

なお、以下、説明の手順として、
ご本のなりたちやご本の目次を入れましたが、
あらすじだけ参考にしたい」、あるいは、
感想だけ覗いてやろうかなというかたは、
 この記事の目次を開き、
「あらすじ」か読後感想」をクリックして飛んでください。

 本書のなりたちと著者について

初出は1993年、学習院教養新書の一冊として。
2023年、学習院の創立150周年記念事業の一環として、
紀伊國屋書店から新装版で復刊された。
(筆者が拝読したのは新装版です)

本書の目次紹介

はじめに
1.大使公邸での十二日間
2.ホール邸での生活
3.オックスフォード大学入学
4.オックスフォードについて
5.オックスフォードでの日常生活
6.オックスフォードでの芸術活動
7.スポーツ
8.オックスフォードにおける研究生活
9.英国内外の旅終章 二年間を振り返って
あとがき/復刊に寄せて/参考文献

・本書のあらすじ

浩宮徳仁親王の英国留学は、1983年6月21日未明、特別機がロンドンの
ヒースロー空港に着陸した瞬間から始まった。
この留学が、「“皇太子”の留学は暗黙の厳禁」という既存の制約
(宮中。政府。世間?)を超えて実現に至ったのは、何よりご両親
(当時の天皇ご夫妻)の尽力によるものであった。

著者・浩宮(敬称略・ご容赦)は大いなる感謝と、期待と不安を抱いて、
10日余り、大使公邸で過ごす。まずは女王ご一家にご挨拶。
オックスフォード大学近辺の下見。学長と指導教授にも挨拶を済ませ、
英語研修のために、大学に近い、トム・ホール大佐の邸宅(荘園)に移る。
ホール大佐は女王陛下の武官で英語学校経営者である。ホール邸では毎日、
ホール学校から先生が出向いて、入学前の英語研修が続けられる。
朝はBBCニュースの聞き取りと新聞記事を要約し、口頭で説明する訓練。
店舗での買い物のしかた、パブではビールの注文のしかたなどを学ぶ。
実地の英語に慣れるのはかなり大変だったとのこと。とくに聞き取りに慣れるまでの
失敗がユーモラスで正直に綴られている。

入学を前に、オックスフォードの指導教授マサイアス先生に学内の食堂でのランチに招待
され、他の学生数名とともに会食。先生の私邸にも招待されて、一家との交流が始まる。
村祭に行き、船でテムズ川を下り、テニスを楽しみと、徐々に地域と英語の生活に
慣れていく。
著者は、2年間の短期で可能な限りの学習成果を上げようと改めて決意。同時に、生涯で
めったにないこの期間を、できる限り有効に活用し、楽しもうと心に決める。日本なら、
一人で自由に歩くことなどない。ここではロンドン警視庁派遣の護衛官2名、交代で、
1名ずつ、つくが、それでも生まれて初めて“普通の人間らしい”生活ができるのだ。

10月、オックスフォード大学・大学院に入学。
オックスフォードには“コレッジ”と呼ばれる学寮がいくつも立ち並ぶ。
著者は、以前から日英関係者の協議によって決められていた
マートン・コレッジに配属され、学友たちには、プリンス・ヒロでも、
ナルヒトでもなく、“ヒロ”と呼ぶように頼み、受け入れられた。

オックスフォードの学寮制度や歴史、数々の学寮については本書に
図入りで、大変わかりやすく説明されている。内部の生活(じつは古くて
エアコンなし、シャワー不便など)の、あまり聞けない逸話も盛り込まれ、
興味深く、また大変楽しい。洗たくアイロンも自らする。
初めての経験を、ときには失敗もするが、次々と楽しくこなしていく。

オックスフォードのゼミは、日本の複数グループ授業とは違い、
指導教授と学生が一対一の授業である。やがてもう一人の先生が
つくが、著者も他の学生同様、山のように課される日々の課題を黙々と
こなし、広いキャンパスを自転車で移動。
自由時間には、日本語や日本の楽器に興味をもつ学生とも多く知り合い、
空手を始め、日本関係のサークルの名誉会長も引き受ける。学友たちと
パブのはしごをし、レストランにもでかけた。ジーンズ姿でディスコに
入ろうとし、その晩のドレスコードに合わないと入場拒否にあったり、
不注意で傘を盗まれたこともあった。
ツアーの日本人女性が著者を発見し、「うっそー!」と叫ばれ。
“うっそー!」がどういうことかわからず混乱した逸話に触れれば、
笑いとともに、皇太子としての日本での(一般とは隔離された)
生活を思って、笑うに笑えない。

1984年2月には、留学先にご両親がやってくる。ご両親(当時の天皇皇后両陛下)
がアフリカ訪問の折、ベルギーに寄られると、ベルギー王室がさっそく著者を
首都ブリュッセルに招待してくれた。長年の親しいお付き合いの成果である。
3月には両陛下がご帰国に先がけ、ロンドンに立ち寄り、オクスフォードをご訪問。
著者は学内をご案内。ホール邸ではお茶を学寮では、先生方が揃って、昼食会で
両陛下をおもてなしした。
久々の家族との再会の嬉しさが素直に溢れる記述に、心打たれた。

スポーツや音楽も存分に楽しんだ。
学寮対抗戦のテニス選手としても活躍。比較的小柄な著者だが、
大柄で屈強の他選手たちに粘り勝ちすることも多かった。
巧みなビオラ奏者として、音楽サークルの演奏にも誘われて参加。
本場のオペラや演奏会も都度、気楽に出かけて堪能。
ジョギング、登山、スキーも大いに楽しんだ。近隣諸国にも旅行し、
各王室とも、市民とも交流を深めた。
パリとロンドンは光が違う。英国服が一見地味なのは光に協調する
結果なのだと、鋭いファッション考察も。

こうして2年間の貴重な留学生活を終えた著者は、たくさんの送別会を経て、
19年に帰国。その後も、今回の留学で培った人脈をだいじに、
象徴天皇として国際親善に努められている。

・読後感想

最初にも書きましたが、あるとき、大変なインテリの学校友だちが
本書を読んで
「天皇陛下って、いい人よ」
としみじみ言うのを聞いて、少々迷いながらも、購入してしまった本書。
結果は大正解で、読み出したらとまら図。読み返すたびに、新しい発見があり。
友だちの感想は、じつに本当だと思いました。

これは、勉学が好きで人生が好きで、しかも自分の立場をよく心得ている一人の若者が、
留学を機に、いかに真面目に生き、真面目に楽しみ、ひいては自分と社会のために、
少しでも良い未来を築こうと、改めて決意し、努力する姿を、
正直に綴った一冊です。
たまたま著者が皇太子であっただけで、小さな失敗も
楽しみも、一般人と同じだなあ、とふしぎな親近感を覚えました。
その一方、皇太子ならではの特殊なエピソードもふんだんにあり。
ついつい、引き込まれて読んでしまいます。
そうそう!
言葉づかいが大変ていねいなことも、ご報告しなくては。
今までの男子皇族に多い、固くて近寄りがたい言い方が、この本に限っては皆無。
素直で品が良く、音楽をする人独特でリズムがよく、非常に読みやすい文章です。
著者が、どんな場合も、相手に常に敬意と感謝をもって接する人であり、
非常に聡明で正直で、ユーモア溢れる人柄の持ち主であることを
確かめられたのも、嬉しい限り。

留学時、(前もって、相当訓練されたであろうに)英語の聞き取りや受け答えに
苦労しつつ、たゆまず学習を続け、着々とレベルを上げていかれた様子は、
正直なレポートともに英語学習に悩む皆さんにも、
大きな参考と励みになるかと思います。

個人的に一番嬉しかった収穫は、天皇がなぜ水運の著名な研究者になられたかが、
ご自身の言葉で綴られている
のが読めたことです。当初は道(地上輸送)の研究を
考えていたところ、テムズ川と向き合ううちに、テムズに魅せられ、水運について
考えるようになり、ついにはそれを生涯の研究テーマとされるに至ったと。
詳しい事情は本文を読んで頂くのが一番いいと思いますが、研究者がテーマを決めるまでの
苦悩や逡巡と、まるで運命のように訪れたテーマとの出会い、それを真摯に追求する態度は
感動的で、心から模範にしたいと思いました。宮内庁は、こうした皇族の生の声を広めることに、
もっと努力してほしいものです――ついでながらの苦言を失礼。

もう一つ、感動したのは、「当時の日記、護衛官の日誌、公電などをくまなく精査し、
正確性を高めた」とあとがきにあること。研究者としての誠実な態度を拝見でき、
嬉しい限り。オクスフォードの図入り説明も大変わかりやすく、一緒に学内を
巡るような楽しさがありました。

最後にもう一つ。非常に印象的だったのは、
自分で作る思い出もあれば、人に作ってもらう思い出もある
という記述。多くの人に助けられ、一生に一度の、すばらしい時期と
思い出を得られた感謝の実感に満ちています。

爽やかで、明るく、あたたかな気持ちに溢れた本書、
「セレブ物←!はねえ~(失礼!)」と心の中で、一瞬躊躇した自分を猛反省し、
ここに、心からおすすめします!

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